便器に足を突っ込んで抜けなくなった母親へ、最新型iPadを購入

誰でも急に便意や尿意を催すことはあるだろう。少なくとも、我が家では全員が経験している。

ところで我が母親だけれども、しばらく前にトイレへ急ぐあまり、便器に足を突っ込んでしまう事件を起こした。どうして事件なのかというと、30分くらい頑張ってから抜けないと諦め、「緊急非常ボタン」を押したからだ。

どうしてこの事件が最新型iPad購入に繋がるのかは、これから順を追って話をさせて頂くことにしたい。

トイレの非常ボタン

まず「どうしてトイレに非常ボタンがあるの?」と、不思議に思う人がいるかもしれない。これ、実はけっこうトイレには非常ボタンが設置されていることが多い。

特に病院では良く見かける。しばらく前に人間ドックを経験した際も、採尿用のトイレには非常ボタンが設置されていた。

設置理由は簡単で、トイレで調子悪くなる人が多いからだ。最初に具体的な例を挙げると、「僕自身」だ。

あれは若かりし高校生時代の頃、僕は熱を出して寝込んだことがある。一週間近く寝込んだので、おそらくインフルエンザか何かだったと思う。ともかく食欲がなく、ひたすら布団の中で、じっとしていた。

本当に全く身動きせず、じっとしていた。とりあえず水分だけは取っていたけれども、面倒だったので食事は殆ど食べなかった。そして実家は放任主義(?)なので、誰も僕が全く食事しないことを問題視しなかった。

で、一週間くらいが経過した後、トイレに入って用事を済ませようとしている時に、めまいが急に襲ってきた。小学生の頃、朝礼時に貧血で倒れたという恥ずかしい経験があるので、「おそらく意識を失うだろうな」と予想できた。

もちろん実家のトイレには非常ボタンがない。そこで僕は大声を出してから、床に倒れた。もちろん予想通りに意識を失ってしまい、気づいたら救急病院のベッドに横たわっていた。

トイレというのは温度変化があったり、いきんだりして体調が変わったり、そもそも病人にとっては急激な運動になるので、なかなか危険地帯だったりするのだ。
ちなみに僕は病院でブトウ糖を点滴されたら、たちまち元気になった。
(我ながら、高校生にもなって、自己管理がダメで情けないというか)

なおトイレで調子が悪くなった例は、僕だけではない。親父も脳出血で手術が終わって様子見をしている時、トイレで調子を崩した。その時は自ら歩いて、元気にトイレへ向かった。そして少し心配になった頃、「踏ん張り過ぎて疲れた」とのことで、車椅子で帰って来た。

なんでも長いこと踏ん張り続けたことによって、だんだんと気分が悪くなってしまったとのことだった。今となっては残念ながら、それ以上の詳しいことは分からない。

何しろ親父に頼まれて購入したiPhoneを届けに来たのが面会理由だった。彼のベッドの脇で電源の入れ方をメモ書きしていたら、気が付いたら苦しそうな表情を浮かべていた。異変に気付いた看護師が慌ててナースコールをかけたものの、それ以後は意識が戻ることなく、数時間後に緊急手術となったけれども甲斐もなく、数か月後に他界した。
(脳出血が再発していたのだ)

「なんだか疲れた気がするので寝る!」が、親父から聞いた最後の言葉だ。今にして思うと、実に彼らしいと言えるかもしれない。殆ど自分のことを心配していなかった。

話は逸れたけれども、現在お袋さんが過ごしているのも、保健師の常駐している高齢者向けマンションだ。だからトイレに非常ボタンがあっても、別に不思議なことない。

便器に足を突っ込んだ理由

次に便器に足を突っ込んだ理由は、それまでメールを書くのに集中していたからだ。「一段落したら、急にトイレに行きたい自分に気が付いた」とのことだ。

ただしお袋さん、49歳で脳梗塞を経験している。左足は動いて歩行できるものの、感覚は殆どないとのことだ。そして昨今の外出自粛などで、さらに体が動かなくなっていた。

ただし実を言うと、僕は彼女が便器に足を突っ込んだことに驚いている。足を上げるのにも苦労しているのだろうと思い込んでいたけれども、どうやら根本的に間違っていたらしい。

何しろ便器に足を突っ込んで抜けなくなるには、相当な高さまで、足を上げることが必要になる。脳梗塞後のリハビリで、「奇跡の小野谷さん」と、周囲から翔さんされただけのことはあるらしい。

ただしもちろん、昔より体の自由が利かなくなっていることは、認めざるを得ないだろう。ご心配いただいた方のために申し上げておくと、この一件の後に手続きをして、要支援から要介護へ変わった。今では火、水、木、金とヘルパーさんに来て頂いている。

最新型iPadの購入理由

そしてようやく最新型iPad購入へと至る訳だけれども、実はこれには複合的な要因が存在している。

まずお袋さんは「高齢者あるある」として、孫と会話するのが大好きだ。しかし高齢者だけが居住可能な "高齢者専用マンション" なので、管理元の方針によって、子供は面会謝絶となっている。

だから今までは、子供の使わなくなった第7世代iPadを拝借し、それを僕が実家へ持参し、子供のスマホとiPadでLINEビデオ通話していた。

だが子供も最近は友だちと休日に会うことも増え、同時にイラスト作成も多くなってきた。そうなると別に与えたiPad mini第5世代では画面が小さく、第7世代iPadが再び使いたくなって来る。今は贅沢にも、iPad miniとiPadの両方を使っているのだ。

それで先月あたりから、冒頭画像に登場した、僕の初代iPad Airが復活するようになった。ただし初代iPad Airはサポート終了してから一年くらい経過している。最近では最新アプリをインストール出来なくなって来た。

幸いLINEによるビデオ通話は可能だけれども、2022年6月7日(日本時間)にはiPad Air 2もサポート終了が発表されてしまった。いよいよ旧機種の先行きが怪しくなって来た。

一方でSurfaceパソコンは、LINE全画面表示を何とか成功させたものの、遅くて使い物にならなかった。Amazon Kindleなどを使おうとしても、どうしてもモッサリとした動作になる。それに持ち歩きが不便だ。
そろそろ僕も、自分用にiPad miniが欲しくなって来た。

そんな訳で、実はここ最近は、近所の店を訪問し、中古のiPad mini価格をチェックしたり、子供にiPad miniを試させて貰ったりしていた。

だがiPad miniを見ているうちに、ふと考えて込んでしまう瞬間があった。

「小野谷静よ、お前は孫の顔をじっくり見たいと願う母親に対して、iPad miniの小さい画面で良いと考えているのか?」と。

たしかに、画面は大きな方が良い。そして初代から第6世代までは9.7インチ画面だが、最新型iPadは10.2インチと大画面化している。

そしてここで生じたのが、先日の「パソコンの使い方を忘れちゃった」事件である。

本当にパソコンの使い方を忘れてしまったかはともかくとして、いちいちOSを最新状態にアップデートするのは面倒だし、いずれはノートパソコンをテーブルへ置く動きも難しくなって来るだろう。

さらに考えると、いずれは保健師常駐の高齢者向けマンションから、施設へ移動する可能性もある。その場合、パソコンでインターネット接続する環境を確保するのも難しくなるかもしれない。

つまり最新型10.2インチ画面iPadに加えて、携帯電話会社の回線経由で、インターネットへ常時接続できるセルラー版が望ましいだろう。

もしかすると、いやおそらく、無駄な投資になるかもしれない。しかし可能性がゼロではないのに、このような出費をケチって良いものだろうか...

うまく義母のようにiPadを使えるようになれば、ビデオ通話で実家の様子を確認することも容易になる。コミュ障の僕が、母親への説明に苦労する負担も減る。母親も嬉しい。

そう考えて、僕は清水の舞台から飛び降りる覚悟で、最新10.2インチiPadを注文することにした。

以上が、便器に足を突っ込んで抜けなくなった母親へ、僕が最新型10.2インチ大画面iPadを購入した理由である。

(お袋さんはタッチパネルはおろかスワイプにも慣れていないので、12.9インチiPad Proは不採用とした)

これが吉と出るか、凶と出るかは、今の僕には全く予想がつかない。ともかく挑戦してみるしかない。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静