漫画フライジャイルの岸先生になれる...かもしれないボールペン製作記

LAMYのSafari

僕にとって、「メモ取り用の筆記具」は重要な仕事ツールだ。

書類にサインするボールペンには、在来型の油性インクを使っている。だから、どうしても速記が必要となった時や、無理しても「やる気」を引き出したい時があると、別なボールペンが必要となる。

本記事では久しぶりにメモ取り用の筆記具を変更したので、その経緯を報告させて頂くことにする。ちなみに漫画フラジャイルの岸先生のご尊顔を拝することが出来るLAMYボールペンだけれども、実は結構苦労したのですよ、ハイ。

腕の限界

実は小野谷静というと、文具業界では悪名高い存在だったりする。何しろ殆どの高級ボールペンに対して、三菱ジェットストリーム低粘度油性インク替芯を入れた体験レポートを作成している。

高級ボールペンのビジネスモデルは、ボールペン本体の売上だけでなく、ボールペン替芯の売上にも頼っている。千円を超える替芯など、「当たり前」の部類に属する。

不思議に思う人がいるかもしれないけれども、そもそもの問題は、僕の "腕" にある。全く鍛えられていない腕なのに、大量のメモ書きをする。そしてスマホよりも、パソコンでキーボードを使うことが多い。

普通の人間でも、三時間連続してボールペンを使い続ければ、腕が疲れて来るだろう。これが朝のウォーミングアップとなることもある。

アイディアが湧いてきた時って、ともかく書いて、書いて、書きまくる状態になる。調査している時だって、キーワードは手帳にメモしておく。ともかく忙しい。

だからメモ取りには、腕の負担が少しでも軽減するように、低粘度インクの油性ボールペン替芯を使うことになうr。もしくは、シグノやSARASAのような、ジェルインクや水性インクのボールペンを使うことになる。

筆記量を減らすという選択肢など、全く存在しない。それから相性が良いと、それこそ集中力もアップして、スポーツ選手が "ゾーン" に入ったような状態になることもある。

ただしジェルインクや水性インクの替芯は、僕にとっては要注意な存在だ。何しろ、僕はいい加減なヤツなので、ペン先を出しっ放しにしたまま、ワイシャツの胸ポケットに投げ込んでしまうことがある。

だからひどい時には、巨大なシミを作るという結果になる。いちおうビニール製の胸ポケットカバーを使っているけれども、それでも油断は禁物だ。

そんな僕が、久しぶりに机の中を整理した際、大量のジェルインクの替芯を発掘してしまった。ただでさえ教育で、家計は火の車というか、もはや車の形状も留めていない程になっている。

それで心の中に、「もったいないお化け」が出現して、キャップ式のボールペンを使う気持ちになったという訳だ。

スケルトンはダメ

さてキャップ式のボールペンだけれども、実は今まで二本も紛失している。恋に破れてしまった者は、みんな臆病になるという。出来れば今回は高級ボールペンではなくて、お手頃価格のボールペンで行けると嬉しかった。

そんなメンタルの僕が真っ先に手を出したのは、LAMYのスケルトンボールペンだった。子供が「推し」のボールペンを購入したこともあって、スケルトンのボールペンは何かの時に使ってみたいと考えていたという話もある。

そこでこのところ一気読みして大感動した、漫画フラジャイルを使ってみたいと思ったのだ。数年前にTVドラマの原作になったほどの人気マンガで、ご存じの方がいるかもしれない。

「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」というタイトルの通り、医療ネタである。彼は、とある総合病院で病理医として働き、日頃は患者と会話することは無い。患者と接した医師たちから提供される情報や細胞の分析を通して、病因の評価結果を医師たちへフィードバックする。

病気をテーマに謎を解くというストーリーが多く、ある意味では推理ドラマとも言えそうだ。

そしてこの岸先生が変人だけれども、見た目の通りで、ホントに格好良いのですわ。カンファレンスでの遠慮ないモノ言いは、なんだか他人事ではない。

僕も余裕があったら、大学で物理学科を卒業した後で、医者を目指せば良かったかもしれないと思ったほどだ。
(実際に尊敬する知人から医者向きであると評価され、「医者になれば良かったのに」と嘆かれたこともある)

まあ自分のことはどうでも良い。ともかく僕は、まずスケルトンボールペンの実戦投入を試みた。出来上がったは、次の画像のようなボールペンだ。

「 ...... 」

画像を御覧いただくと分かるように、明らかに「何かが違う」と言える。いやいや、何かが違うどころか、これでは一般的な社会人が、客先はおろか職場でさえ使うのは難しい。「小野谷さん、今度は何を始めたんですか?」と、周囲から変な目で見られかれない。

ちなみにフラジャイルの絵は、漫画の単行本に付属している帯の一部を流用させて頂いている。最も小さな絵柄である、フラジャイルLINEスタンプを紹介する部分を切り抜いてみたけれども、それでも目立ち過ぎる。
(これで満足という人がいれば、すぐに帯付きのフライジャイル単行本を購入しよう)

それでキャップ式スケルトンボールペンは諦めて、次の案に移った。コチラはキャップを外した時にだけ、絵柄を少しだけ見ることが出来るタイプである、同じLAMYサファリだけれども、グラファイトカラー版という別モデルになる。

これならば自宅の外へ持ち出しても、恥ずかしくないと言えそうだ。家族の「やめてくれ」もなく、子供に至っては、「私も欲しい」と言い始めた。

ちなみにグラファイトカラー版は、無色透明の窓ではなくて、少しだけ黒味がかっている。試しにスケルトン版ボールペンの先端部分を装着してみたけれども、僕の場合はイマイチな感じに仕上がった。

無色透明だと漫画の白い絵柄がハッキリと見えてしまうし、こういっては何だけれども、岸先生の笑い方は「特徴的」だ。僕はイマイチ程度に感じるくらいで済むけれども、フラジャイルを知らない者が見たら、変な笑い方をした顔の岸先生に、驚かれてしまう危険もある。

そんな訳で今回は大人しく、グラファイトカラー版の部品パーツを、全てそのまま利用することにした。

軽さの克服

さて見た目はスッキリしたけれども、実はそのままでは使い物にならなかった。ボールペンに金属部分が全くないこともあって、「軽過ぎる」のである。いくら軽量である方が腕に負担かからないといっても、運筆にも影響するのには困ってしまった。

ちなみに一方でオバマ元大統領が使ったクロスのタウンゼントという高級ボールペンだと、キャップも含めて42gという重量になる。実に三倍近い重量差だ。この軽さを、何とかして克服する必要があった。

そして何とか... してみたのが、上の画像だ。ペンチを使って、二穴パンチ加工資料をファイリングするための金属クリップを加工し、替芯の周囲に巻き付けている。脇にある金属ロールケーキみたいな金属塊は、ボールペンの後端部分のスキマ埋めに使ってみた部分だ。

ちなみに金属塊は、最初は自転車のバルブを使ってみた。この金属バルブは圧倒的な重量感が頼もしかったけれども、実際にボールペンを組み立ててみたら、後端が重くなってバランス悪かった。

そこで金属クリップを丸めて金属塊にしてみたけれども、これが重量バランス的には丁度良い感じだった。実際に試用してみた印象も上出来で、許容範囲内で最も軽量に近くなり、長時間のメモ取りでも書き心地に満足できそうなボールペンに仕上がってくれた。

そして、こうして実稼働を始めた「フライジャイル 病理医岸京一郎の所見」ボールペンだけれども、稼働三日間を経過した現在、ボールペンは期待以上に大活躍してくれている。

メモを書き込む量が、一週間前の1.5倍くらいに増加している。その内容はさておき、苦労して加工した甲斐があったというものだ。

そんな訳で、久しぶりにメモ取り用のボールペンが選手交代することになった。お手頃価格なので、紛失してしまったら悲しいけれども、簡単に二代目を復活させることが出来る。

SARASAやシグノの替芯を使えるので、忙しい時でも、コンビニなどで手軽に入手できる。(僕は少しで出費を押さえたいので、近所の書店で替芯だけを購入している。これは三菱ジェットストリーム替芯も同じだ)

もしも僕の仕事内容が良くなったら、それはフラジャイルの岸先生のおかげかもしれない。
(あと、中熊先生が現実化したみたいな、阪大仲野徹先生のおかげもあるかもしれない。しかし市民向け一般書とはいえ、医療の解説書で、自らの頭部にまで言及なさるとは恐れ入りました)

それでは今回は、この辺で。ではまた。

P.S.
しかし高級ボールペンに負けない使い心地のボールペンを作ったと思っていたけど、冷静に振り返ると、単純に漫画フラジャイルが大変魅力的だというだけのことかもしれない......

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記事作成:小野谷静