横浜日記

書籍紹介「こわいもの知らずの病理学講義」から腸内フローラへ

今回は病理医ヤンデル先生のおかげで、良書に巡り合えたという話。ついでに少し、腸内フローラの話題も取り上げたい。

最近はいろいろな情報が飛び交っており、僕のような一般人は大変だ。今回も会社の人間ドックで、腸内フローラ検査なるものが宣伝されており、申し込みをした方が良いのか悩んでしまった。

そんな時に役立ってくれたのが、ヤンデル先生が自著で紹介なさっていた “こわいもの知らずの病理学講義” という本である。今回は、この本から始まって、検査を受けないという結論に至った経緯を紹介させて頂くことにしたい。

(ヤンデル先生の著書は、残念ながら次の機会にしたい)

こわいもの知らずの病理学講義

“こわいもの知らずの病理学講義” とは、阪大教授である仲野徹先生の著書だ。内科医から研究者の道へ進んだことが一因かもしれないが、ともかく驚くほど幅広い知識や、物事の見方を紹介して下さっている。

「ひとは一生の間、一度も病気にならないことはありえません。ひとは必ず病気になって、死ぬんです。だとすれば、病気の成り立ちをよく知って、病気とぼちぼちつきあって生きるほうがいい」という理由から、本書を執筆なさったそうだ。

担当編集者によると、「著者は長年、大阪大学医学部で病理学を講義しておられます。その経験を活かし、わかりやすく、読んでいて飽きないおもしろさのある病理学の入門書を書いていただきました」とのことである。確かに、僕のような一般人でも読みやすい。

しかしこの本、病理学の教科書では世界的ベストセラーであるロビンス “Basic Pathology(基礎病理学)” の第1章から第3章に相当する内容を紹介している。それなのに僕と同じく「読みやすい」とレビューする一般人が多く、専門家たちが驚いている。

ここら辺が仲野徹先生のスゴいところで、単純なロジック(論理構成)だけを駆使し、説明方法(言い回し)が見事なので、一般人はスンナリと「分かった気持ち」になれる。それから絶妙な雑談が、頭を回転させ続けて披露することを防いでくれる。

一方で専門家たちは、どうやら論理を構成する前提事実となっていることまでも、真偽検証をしながら読み進めているらしい。だから医学部一年生など、専門家への道を登りつつある者たちには “超ハードワーク”となる。

なにしろ医学の初歩を身に付けつつある段階では、まだ一冊の本に「これでもか!」と散りばめられた “全ての” 前提事実を、さっさと真偽検証できるようになるには、長い道のりが待っている。

「専門家ホイホイ」といった表現をしても、良いかもしれない。実に興味深い本なのだ。

ちなみに世間では悪評高い近藤誠氏の著書は、ストーリーが物語風に書かれているものの、複雑で間違ったロジックで構成されており、そこに致命的に間違っている前提条件が、さりげなく置かれている。

僕も最近知ったのだけれども、一流大学で修士号まで取得していても、物事を論理的に考えることが出来ない者たちがいる。そういう者たちには、「健康診断は受けない方が良い」などと「真偽はともかくとして分かりやすい主張」を打ち出す近藤誠氏の著書は、なぜか良書に見えてしまうらしい。

(図書館で近藤誠氏の本が予約者数5名となっているのを見ると、医療関係者ではない僕でさえ、思わず溜息が出てしまう)

いざ腸内フローラへ

さて今回困ったのは、昔は会社の付属病院だった某病院に人間ドックを申し込んだところ、冒頭画像のような紹介チラシが問診票と一緒に送られて来たことだ。

ちなみに人間ドックに追加できるオプション検査の金額を合計したら、100,800円となった。恐ろしいことに、オプション脳ドック(26,500円)とか、肺ガンを調べる胸部CT検査(10,200円)は別枠である。

昔は三つあった工場が一つになってしまった事情等があり、数年前に病院は会社から独立することになった。数年前に人間ドック用のビルを建設していたけれども、その結果が宣伝チラシやオプション検査メニューのように見える。病院の経営というのも、なかなか大変そうだ。

それはさておき、わざわざパンフレットまで提供されていた腸内フローラ検査には困ってしまった。腸内の状態が、自閉症の原因になるようにも読めてしまう。

頼りになる友人は徹夜連続で忙しく、あまり迷惑はかけたくない。その上、今は独立しているとはいえ、昔は自社の付属病院だ。先進医療に発展に貢献できるならば、試してみても悪くないかもしれない。

さてそんな風に悩んでいた僕を助けてくれたのが、先ほどの仲野徹先生が執筆なさった著書だ。困ってGoogle検索にお世話になってみたところ、”からだと病気のしくみ講義” という本において、腸内フローラのことも説明して下さっているらしいことが分かった。

ありがたいことに、この本はKindel Unlimitedで読むことが出来た。たしかに目次に、「個人差が大きい腸内フローラ」とか「『腸活』に効果はあるのか?」という項目がある。ふむふむ… なるほど。

少なくとも仲野徹先生が本を執筆なさった時点では、腸内の状態が健康に影響する部分が大きいとは分かって来たものの、そんなにホイホイと簡単に腸内バランスを変えることが出来るという訳には行かないらしい。それにまだ、研究が進み始めたという段階らしい。

そこからふと思いついてGoogle検索で調べてみたら、ネイチャー誌で興味深い記事を見つけることが出来た。

自閉症は英語でautismと書く。そしてNature誌の記事では、link(関係性)の存在する可能性があるので、研究が進められているという内容が紹介されていた。

やっぱりオプション検査のチラシ、少しばかり表現が前向き過ぎるようだ。どうやら腸内フローラ検査を受けて役立たたないデータを得るよりも、現時点では研究機関などに寄付した方が有益らしい。

そんな訳で今回の人間ドックでは、「腸内フローラ検査は申し込まない」という結論に達したのだった。やれやれ。

まとめ

以上が病理医ヤンデル先生が紹介なさっていた”こわいもの知らずの病理学講義” という本から、人間ドックのオプション検査で腸内フローラ検査を申し込まないという結論に至った経緯である。

一般人向けに正確な情報を提供することにご尽力下さっているヤンデル先生や仲野徹先生には、ひたすら感謝するばかりである。(おかげで本当に助かりました)

それにしても近藤誠氏はともかく、自分の身内だと思っていた病院からアヤシゲな広告チラシを受け取るようになるとは、なかなか溜息の出るご時世である。

しかし、それもこれも、三工場から一工場への縮小という事態を招いた、ふがいない企画部門(自分のことだっ!)が一因とも言える。

… 明日からのお仕事、頑張ることにしましょうか。(人間ドックが終わってから)

それでは今回は、この辺で。ではまた。

——————————-
記事作成:小野谷静