メモの魔力:色(カラー)を活用した文字や図の書き込み方法

今回はメモやノートを取る時に、色 (カラー) を活用しようという話です。

今回は残念ながら、Piramid Principleは使用しません。何しろ万年筆の色が黒、赤、青の三色しか無かった時代に考案された技法です。

それだけではありません。Pyramid Principleは、基本的に思考を整理してから表現するための技法です。コンサルティング会社で生み出された経緯から、広く見ても「気付かずに見落としていたアイディアを拾い上げる」程度までがカバー範囲です。

つまり「独創的なアイディアを生み出す」といった方面のことは、あまり意識せずに開発された技法なのです。ここら辺が、"頭のよさはノートで決まる" や "メモの魔力" とは異なる点です。

その独創的なアイディアを生み出す支援方法の一つとして、これらの書籍は「文字の色 (カラー) の活用方法」に拘っています。

そういえば日米で文化が異なるとはいえ、最近の国内出版物はカラー印刷を上手に利用していると言えそうです。(特に "メモの魔力" は2種類のカバーを作成しました)

今回は特に四色ボールペン活用術を使用する "メモの魔力" に重点を置いて、「色 (カラー) の活用方法」を紹介させて頂くことにします。なぜならこの術は、斎藤孝教授の三色ボールペン活用法を発展させたものだからです。

(私は仕事などの関係から創造性を高めるだけの三色ボールペン活用法で十分ですけれども、ビジネスに必要な客観性を高めるには四色ボールペン活用術の方が適しています)

整理と創造

そもそも人間の思考とは何でしょうか。

ITテクノロジー屋さんの視点で見ると、さまざまなデータ間に関係を構築することです。物事を理解するとは、生まれた時から蓄積かつ整理されたデータと照らし合わせて、何かと特定の関連性があると比較対象できたことを意味します。

このような視点が本当に適切かどうかは分かりません。ただし人間は目、耳、鼻、舌、肌などからデータを収集し、口から音波を出しています。またこれとタイミングを合わせて体を動かすことで、他人とコミュニケーションなるものを実現していることは事実です。

そうそう。もちろん紙への読み書きも通して、コミュニケーションを取っています。(パソコンやスマホも同じですね)

主に "整理" とは、「頭の中」とか「心の中」で、あるデータ群の集合に対して一定の関係性を持たせることだと考えて良いでしょう。もしくは、そのデータの集合を "言語" や "図 (イメージ)" の形式で保有できるようになることを、整理と表現するのが適切かもしれません。

だから頭の中が整理された状態では、言葉や図の形式でスラスラと書けて、それを見た相手も "分かった" と考える訳です。Pyramid Principleは、この "整理" という作業を効率化する技法だと言えます。

しかし世の中には、整理とか理解だけでは満足せずに、今までに存在しなかったパターンの物事を造り上げる人たちが存在します。発明家やクリエイターなどが該当します。

そういった人々は、相手に今までにない体験というかデータといった類の代物を提供する訳です。私はこれが "創造" だと考えています。

思い出してみれば、私は小学校の頃に何度も青少年創意工夫展に作品展示されました。皆と同じような作品を作っても、満足できずに「プラスα」することが好きだったのです。

これは別に私が天才だとか特別な才能と呼ばれる能力を持っているという訳ではなく、単に「既存のパターンの組み合わせにより、今までにないパターンで物事に取り組む」という思考特性を持っていただけです。

特別な能力ではないのであれば、創造性は誰でも実現することが可能であるような気がします。そこで、次に紹介する 色 (カラー) を活用する方法が注目される訳です。

色の活用

人間はデータのパターンに反応するように訓練されていて、色にも反応するようになっています。日本語の文化圏で、「燃える青」とか「さわやかな赤」と感じる人は多くないでしょう。

このような心の動き方に着目して、感じ方によって筆記具の文字色を変える方法を採用したのが、"頭のよさはノートで決まる" の齋藤孝教授です。

  • 赤:すごく重要なこと
  • 青:まあ重要なこと
  • 緑:個人的に面白いと感じた部分

冒頭画像が試みとして、"頭のよさはノートで決まる" の表紙に続く見開きページを、私が書き写してみたノート内容です。

実際に試してみると体感できますけれども、"面白い" つまり「今までに体験したことのないパターン」が緑色になっています。つまり創作物のヒントは、主に緑色の部分に隠れている訳です。

今までの私は、「xxxじゃ定石だ。面白くないから、yyyしてみよう」というアプローチを無意識に取って来ました。それが三色ボールペン活用法では、ちゃんと定型化されています。

見事なアイディアだと感心させられます。これをさらにビジネス向けにカスタマイズしたのが、Showroom社長の前田裕二さんです。

彼は "メモの魔力" のP62「4色ボールペンによる『色分け』で判断能力を上げる」という章で、色分けの軸としては「主観 or 客観」と「重要度」の二つがあるとルール化しています。

  • 緑:主観的なこと
  • 黒:客観的なこと:ファクト(事実)のメモ
  • 青:客観的なこと:やや重要なこと
  • 赤:客観的なこと:最重要なこと

青には引用・参照も含みます。いずれにせよポイントは、「緊急度」ではなくて「重要度」で色分けすることにあるとのことです。

「緊急度」は外部要因で決まり、「重要度」は人や組織によって異なるのだそうです。そして前田裕二さんとしては、この重要度の判断は客観的なものなのだそうです。

広辞苑によると客観的とは、「特定の個人的主観の考えや評価から独立して、普遍性をもっていること」とのことです。つまり外部要因として自然界に物理現象としては存在しないものの、誰もが「その通りだ」と合意することが客観的なのだそうです。

少し創造性とは話が逸れますけど、この重要性に関する考え方は興味深いです。最近の私は "ある特定の人物" から、「文章では事実と考察を分けた資料を作成して欲しい」と要望されています。(ミエミエですな)

私からすると事実と考察にキレイに分かれているのですが、そのようには理解して貰えていません。どうやら要望されているのは、「客観的なこと」と「主観的なこと」を分けて欲しいということらしいです。

ちなみに齋藤孝教授は、重要性の判断は自然と出来るようになっていくとの経験則を紹介しています。私も同感であり、つまり齋藤孝教授に近い考え方になります。

つまりどういうことかというと、観察して得たデータとそこから導き出させることは私にとっては自明の事実に過ぎないのですが、"ある特定の人物" にとっては違うのです。私は「他人がどう考えようが事実は事実」という物理屋(物理学専攻)的に思考する傾向が強いらしく、「客観的に見えること」には興味が薄いようです。

前田裕二氏はビジネスに携わる者としては、客観的な判断力を持つことが重要だと説明しています。たしかに人間関係の中で動くのならば、それは "大変に重要" なことです。つまり "重要性" というのも、メモを取る者にとっては大切なことなのです。

さて一区切りついたので話を本来の創造性に戻すと、創造性については両者とも共通しています。個人的に、つまりは主観的に面白いと感じたことを緑色で記述する訳です。

創造というのも量が影響すると仮定すると、緑色の部分を増やせば良い訳です。前田裕二さんは、先程の章で次のように記述しています。

"ファクト(事実)に対して自分が思ったこと、つまり主観的な発想は、緑色で書きます。ファクトを書きながら同時に緑色で主観を書き込む癖をつけると、自分の意見をスピーディーに構築・発信する力が急速に増します。だんだんと、メモを俯瞰したときに緑色が少ないとちょっと気持ち悪いくらいの感覚にすらなってきます。そうなったら強いです。"

という次第であり、どちらか迷った場合には、特に新社会人の場合には前田裕二さんのアプローチを採用するのが良さそうな気がしています。

ちなみに齋藤孝教授は東京大学を卒業しているし、私も過去に医者にIQを測定された時は120でした。東大生の平均がIQ120というウワサも耳にしたので、まあ頭の回転は悪くない部類なのでしょう。前田裕二さんも早稲田大学の政治経済学部卒業ですし、TVなどを見れば一目瞭然の通り、超優秀です。

だから頭の良さとか感性というよりも、創造性だけに重点を絞るか、バランス良くビジネスにも役立てようとするかで、三色派と四色派に分かれる訳です。どちらが技法として優秀であるかといった話ではありません。

なお冒頭画像の文字色は、"頭のよさはノートで決まる" そのものです。いえ実は、齋藤先生のノートを「丸写し」したものです。ちなみに自らのスケジュール手帳などに予定を書き込む場合でも、齋藤孝先生は三色しか使っていないとのことです。

まさに私としては、「個人的に大変に面白い」といったところです。

まとめ

以上がメモやノートを取る場合の、色 (カラー) の活用方法です。基本的に、どちらも分かりやすいコンセプトに基づいています。

そういえば会社の先輩は、「書いて心を落ち着かせる方法」がインドで考案されたという話を先週紹介していました。ともかく現状に満足できていないのであれば、あれこれと悩んでいるよりも、まずはどちらかを試してみるのも良いかもしれません。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

----------------------------------
記事作成:小野谷静 (よつばせい)