入門

Pyramid Principle: 書いたり思考する際の論理

今回は本サイトの肝であるPyramid Principleを、基本概念だけ紹介させて頂くことにします。

さすがはPyramid Pricipleの考案者だけであって、下記の著書は本当に読みやすいです。メモやノートの取り方だけでなくて資料作成技法まで学びたい方は、ぜひ一読することを強くお勧めします。

Pyramid Pricipleの由来

Pyramid Principleを考案したのは、上記で紹介した書籍の著者であるBarbara Minto氏です。彼女がマッキンゼー社員だった時に、お客様向けの説明資料を添削している作業を通して生まれました。

何でも添削上手なので、依頼が山のように殺到したのだそうです。そうやって添削を繰り返しているうちに、体系化した技法とすることを思いついたそうです。

Pyramid Principleという名称は、冒頭画像のようなピラミッド図に由来しています。説明資料の構成を、Pramid図のように構造化してから資料作成するのです。

学会の論文でもビジネス資料でも、読み手を納得させることが出来るのは「データに基づいた論拠のみ」です。根拠に欠ける主張や、論理構成の誤った資料は、信用したら危険です。信用して大金を賭けて、それが間違いだったらば大変なことになります。

ピラミッド図の箱を繋ぐ線は、「帰納法」か「演繹法」で構成されています。ちなみに冒頭画像の図は、帰納法だけで構成されています。

数学の証明と似ています。対象を時間か空間で分割して、全ての要素が主張に矛盾していなければ、その主張は正しいという訳です。(後で具体例で説明しましょう)

一方で演繹法は、「AはBである」「BはCである」から、「AはCである」という主張が正しいと解釈します。「吾輩は猫である」と「猫はネズミを捕まえる」から、「吾輩はネズミを捕まえる」が正しいとする訳です。

テーマとなる主張がある訳ですが、当然ながら聞き手は「それって本当?」と質問して来ます。それに対して、帰納法や演繹法で説明する訳です。そうすると説明内容に対して「それって本当?」と来るので、さらに説明を重ねます。

そうやって最後に事実(データ)に辿り着いて、「それって本当?」は終わる訳です。こうやってどんどんと掘り下げていくので、掘り下げるたびに箱が増えて行きます。

この石を積み重ねたように見えることから、ピラミッド図やPyramid Principleという名称が生まれました。しかし実際のところは、上から下方向へ下りながら増えている訳です。

Pyramid Principleの歴史

Pyramid Principleが考案されたのは、1970年代の頃です。私の持っているペリカン万年筆#400が登場したのが1950年代なので、紙や万年筆が個人でも多用される時代になった頃です。

まだPowerPointのようなプレゼンテーション向けソフトウェアは存在しませんでした。いや個人用パソコン (パーソナル・コンピュータ)も珍しかった時代です。

そういう時代にBarbara Minto氏は応用物理学方面の会議の事務局スタッフなどを経験した後、マッキンゼー社へ入社しました。そしてハーバードビジネススクールでMBAを取得しました。

彼女は大学では物理学を専攻しており、データと論理に基づく思考方法は得意でした。そして物理学方面の素養を養ったおかげで、人間の思考も一定のデータと規則に従って形成されていると考えました。

彼女がPramid Principleを考案できたのも、人間の思考に関する幾つかの洞察から生まれています

  • 思考は図に頼る部分が多い
  • 聞いた瞬間に思考が生じる
  • 見た瞬間に思考が生じる
  • 順序は大切

これは「ロジカル (Logical) 」で「クリアー (Clear)」が大切だということにも繋がります。単にロジカルなだけでは、人間の脳(思考)には負担になるという見解です。

私が米国のTVドラマを見ていると、”Logical!” はもちろん、”Crystal clear!” とか “All most crystal!” という表現を見かけます。そのためには人間の思考特性を活用するのが役立つということだそうです。

(私も「確かにその通りだよなあ」と感じています)

冒頭画像の解説

即席で作成したものですけれども、冒頭画像の解説をしておきましょう。

ご覧の通りで、「私は皆から尊敬されている」を聞き手に納得して貰うためには、どのような説明にするのかという骨格をピラミッド化したものです。

まず「皆って誰で、それって本当?」と突っ込まれそうなので、皆は「マンション関係者」「会社」「家族」だと説明しています。そうすると各々の構成要素が何であるかを質問されそうなので、それを各々で説明します。

で、「皆」が明確になると、今後は「尊敬されている証拠は?」と突っ込まれることになるので、ここでは皆から「証言を得ている」という説明しています。署名まで揃えておくと、尊敬されているというのを否定するのは大変です。

と、いうか、何らかの金銭的報酬で署名を集めた可能性がゼロであるという証明はありませんけれども、ともかく署名は存在する訳です。それが「尊敬されていることの定義」だと言ってしまえば、主張は成立します。

少なくともデータと論拠は明確です。あとは「よつばせいは金銭で尊敬を勝ち取っている」ということを誰かが主張し、それを説明する別資料が作成されることになる訳です。

ちなみに帰納法で大切なのは、説明対象を「もれなくだぶりなく(MECE: Mutual Exclusive and Collective Exhaustive) 分割すること」です。

例えばここでは「皆」を「よつばせいを知る人々」としてMECE風に分割していますけど、「皆」が「日本人」だとか「世界中の人々」となると、私の主張は成立しなくなります。

と、いうか、広い宇宙には宇宙人が存在するかもしれませんから、「よつばせいは全ての知的生命体から尊敬されている」と主張するのは難しいです。

ディベートでは、論拠を突くことはモチロンですけれども、主張の各要素の定義を巡って議論することもあります。私の場合は数少ないディベートで負け知らずですが、全て「定義」の解釈部分で勝利を勝ち取っています。

ディベートは相手も準備をしてくるので、データや論理構成がシッカリしていることが殆どです。そういう時は、MECE部分を突くという訳です。

まとめ

以上が簡単ですけれども、Pyramid Principleの基本概念です。

大学院のMBAレベルと聞くと身構えてしまうかもしれませんけど、数学のように「当たり前のことを当たり前に組み立てて証明する」という技術的な作業に過ぎません。

そして数学でも同様ですけれども、計算式や図というのが大変に役立つ訳です。(Pyramid Principleではピラミッド図)

このようなアウトプットを得るために、メモやノートに気付いたことを書き留め、そして図を活用して説明シナリオを考える訳です。

またアウトプットというのは「テーマを主張すること」であり、大切なのはそれを支える事実(データ)となります。やみくもに見たことや聞いたことを書き留めているだけでは、なかなか良質なアウトプットを得ることは難しいものです。

技術者であれば、これだけでメモやノートの質が大きくアップすることも多いです。本記事が、少しでもお役にたつことあれば幸いです。

(それでも強いオススメは、”The Pyramid Principle” を実際に読むことです)

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静 (よつばせい)