【小野谷家の事件簿】損害15万円のキッズケータイ、見つかる

名探偵といえども、全ての事件を無事に解決できる訳ではない。

金田一耕助は言うまでもなく、シャーロック・ホームズでさえも解決できない事件があった。僕が知っている例外は、明智小五郎くらいだ。

残念ながら僕にしても、数年前に迷宮入りとなってしまった事件があった。キッズケータイが行方不明となり、15万円という損害を出した、時間も金も吹っ飛んだ一件だ。

今回は何が起こって、結局どうなったのかを語らせて頂くことにしたい。

発端はオンライン授業

何かの事件が起こった時、その事件には「発端」と「経過」がある。何かが発端となって、時間の経過によって影響が生じ、事件(結果)に至る。

今回の発端は簡単で、学校のオンライン授業化だった。つまり子供は学校へ登校する必要がなくなり、キッズケータイに触れる機会が無くなった。

で、登校が再開する時になって、キッズケータイが見当たらないと大騒動になった。もちろん僕が必死になり、何度も家の中を探し回ったことは、言うまでもない事実だ。

何しろキッズケータイは、旧式な3Gガラケーだった。用心深い僕なので、故障した時のために、予備機を購入していた。

しかし... 本体が行方不明となってはお手上げだった。何しろケータイには、携帯会社から貸与されたSIMカードなるものが装着されていた。そのSIMカードを、携帯会社は取り扱い終了していたのだ。

つまり3Gガラケーは本体だけあっても使い物にならず、新たに4Gケータイを購入して、4G用のSIMカードへ契約変更する必要があった。

キッズケータイは新規契約できるのは一回だけという契約縛りがあり、新たに4Gケータイを購入するのには、6万円が必要だった。もちろん別な携帯会社で新規契約することは可能だけれども、学校への届け出が必要だった。

アチコチに登録した電話番号も変更する必要がある。おまけに位置検索サービスなども別会社向けに勉強し直す必要がある。契約会社が親子で異なったら、家族間通話の無料サービスなども使えなくなる。

それだけじゃない。3Gガラケーから4GケータイであるiPhone SEへの移行は、3Gサービス終了に伴う移行支援のため、なんとゼロ円なのだ。だから子供のお友達は、中学校へ入学する時に、無料でiPhone SEを入手できた。

しかし4Gキッズケータイに移行したら、iPhone SEへの機種変更には6万円が必要となる。6万円 + 6万円 = 12万円である。

それだけじゃない。

3Gに比べて4Gは、月額払いの回線料金が若干高い。おまけに新規契約でなくて機種変更だから、キッズケータイの機種変更だと月額料金が2倍になる。その他の交通費も含めると、15万円となる。

つまり誰もが苦労しているケータイ契約だけれども、キッズケータイ紛失はシン・ウルトラマンのように、「ウルトラやばいっす」なのである。

呑気に「試しにキッズケータイに電話かけてみたら?」と家族がおっしゃるのを、僕がブチ切れずに「無理だよ...」と大人しく返事できたのは、奇跡に近い。
何しろキッズケータイを最後に子供が充電するのを見かけたのは、3か月以上も前なのだから。

なお心理ダメージとしては、家族が「ケータイホルダーがボロボロになって可哀そうだから、新品を購入してあげて」と依頼されていたこともある。

可哀そうなのは父ちゃん(僕)である。
新品のキッズケータイ向けのホルダーが、むなしくテーブルの上に転がっている。

ただでさえ、僕は親の介護や仕事で忙しい。それなのに、仲良くアイスをお食べになっている母子を見ながら、必死にキッズケータイを探している。ホルダーにしても、昔の3Gガラケー用だから、ネットで見つけるのに苦労した。

もちろん小学生だったから、スマホ(iPhone)は学校持参を禁じられている。だから最初のうちは自分の3Gガラケーを、子供に持たせたりした。

(僕も少しでも新しい機種への優待移行を期待して、ギリギリまで機種変更を待っている段階だった)

しかし子を思う母親心に抵抗など出来ず、泣く泣く15万円の損害を受け入れたのだった。

もちろん携帯ショップへ赴いて2時間半を超える契約手続きを実施したのは、言うまでもなく、僕である。

発見された経緯

しかし先日もTV番組で報道されたように、いつしか偶然により、遺体が発見される事件もある。

名探偵ガリレオシリーズの「沈黙のパレード」にしても、物語は遺体が発見されたあたりから始まる。

予想もしていなかったある日、キッズケータイは、僕の目の前に現れた。

たまたま友だちに渡したいものがあって、台所から紙袋を取り出そうとした。その紙袋の中に、キッズケータイは入っていた。

少し現場をデフォルメして、キッズケータイを見えるように引き出した様子は、こんな感じである。

ストックされた紙袋群の、一番下の紙袋に入っていた。どうやら家族が、キッズケータイが入っていることに気付かず、台所に収納してしまったらしい。

なんで一番下に収納したのかというと、固くて大きな紙袋なので、紙袋群の下敷きとするのに適していた為らしい。

色も白いし、キッズケータイが入っていることに気付けなくても、やむを得ないことかもしれない。

そして母子に上記の光景を見せた時に、二人揃って「てへっ」と舌を出したことも、やむを得ないことかもしれない。

まとめ(犯行現場は横浜駅)

さてそんな訳で、今回は子供から名探偵と尊敬されている僕だけれども、完全にお手上げだったとしか言いようがない。

ちなみに改めて母子へ確認したところ、紙袋の中にキッズケータイが放り込まれたのは、横浜駅だったことが分かった。

制服の採寸で横浜のデパートへ出かけて、ついでにシャレオツな店で沢山の買い物をして、固くて上質な紙袋を手渡されたそうだ。そして横浜駅で電車に乗って、キッズケータイを体から落として紛失しないように、紙袋の中に入れたとのことである。

たしかにキッズケータイを紛失することは無かったけれども、行方不明になってしまったという訳である。

もちろん僕は「お得意のノートへのメモ」により、紙袋などの中に紛れ込んでいる可能性は考慮していた。それでリビングに置かれた紙袋や、台所の紙袋群も一通りチェックしていた。

ただし流石に一番下に入っているという可能性まではメモで検出できず、紙袋群を上から叩いてみる程度で終わっていた。わざわざ、一番下に差し込むとは想定していなかった。

今となっては、全て「後の祭り」である。完敗としか、言いようがない。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静